いつからカラーになった? 昭和の写真が教えてくれる「残す」ということ

1.白黒写真からカラー写真へ。実家のアルバムの「境界線」
2.家庭写真がカラーになっていった1960年代後半~1970年代
3.あなたの家族の「カラー元年」はいつですか?
4.ところが……昔のカラー写真がオレンジ色に変色している
5.なぜ昔のカラー写真はオレンジ色になるの?
6.写真業界も「色あせ」と闘ってきた
7.昔のカラー写真の失敗から、私たちが学ぶこと
8.「データだから大丈夫」と思っていませんか?
9.写真は「その時代に合った方法」で残し直していく
10.大切な家族写真を「2つのカタチ」で残しませんか?
11.あなたの家族の「カラー化の年」を探してみませんか?

白黒写真からカラー写真へ。実家のアルバムの「境界線」
実家の押し入れの奥に眠る、ずっしりと重い古いアルバム。
久しぶりに取り出して、ページを一枚、また一枚とめくっていくと、あるところから突然、世界が色づきはじめることがあります。
そう、「白黒写真からカラー写真へ変わる境目」です。
お父さん、お母さんの若い頃までは白黒だったのに、結婚した頃からカラーになっている。
あるいは、お兄ちゃんが生まれた頃までは白黒で、自分が生まれた頃からカラーになっている。
何気なく見ているその変化ですが、実はそこには、日本の写真文化が大きく変わった時代と、それぞれの家族が歩んできた歴史が重なっています。
今回は、実家の古いアルバムをめくりながら、「日本の家庭写真は、いつ頃から白黒からカラーへ変わったのか?」そして、「なぜ昔のカラー写真は、オレンジ色や赤っぽい色に変色していることがあるのか?」その理由を少し探ってみたいと思います。

家庭写真がカラーになっていった1960年代後半~1970年代
日本でカラーフィルムが使われるようになったのは、1970年代からではありません。
それ以前からカラー写真は存在していました。
ただ、現在のように誰もが日常的にカラー写真を撮影する時代ではなく、一般家庭の写真には白黒が数多く残っています。
そんな家庭写真のカラー化が大きく進んだのが、1960年代後半から1970年代にかけてでした。
1964年(昭和39年)の東京オリンピック。
1968年(昭和43年)から始まった、家庭写真の需要を広げるための「ファミリーフォトキャンペーン」。
そして1970年(昭和45年)の大阪万博。
富士フイルムの社史にも、この時期にカラーフィルムの品質向上やカメラの自動化が進み、女性や家庭へ写真文化を広げる取り組みが行われたことが記録されています。
大阪万博でも、カラー写真市場を広げる販売促進活動が展開されました。
つまり、「1970年のある日を境に、日本中の写真が一斉にカラーになった」わけではありません。
さまざまな技術の進歩や暮らしの変化が重なりながら、1960年代後半から1970年代にかけて、少しずつカラー写真が家庭の中へ入ってきたのです。
だからこそ、実家のアルバムを見ると面白い。
白黒写真の間に、ときどきカラー写真が現れる時期があり、その後、カラー写真ばかりになっていく。
その変化そのものが、日本の写真文化の移り変わりを映しているのです。

あなたの家族の「カラー元年」はいつですか?
ここで一度、ご実家のアルバムを開いてみてください。
あなたの家族の写真が、白黒からカラーへ変わったのは何年頃でしょうか。
昭和40年?
昭和45年?
それとも昭和50年頃?
おそらく、ご家庭によって違うはずです。
そして、その境目の写真をよく見ると、「初めての家族旅行」、「子どもが生まれた日」、「七五三」、「運動会」、「新婚旅行」など、ご家族にとって特別な出来事が写っているかもしれません。
当時のカラーフィルムは、今のスマホの写真のように、何百枚、何千枚と気軽に撮るものではありませんでした。
だからこそ、「この瞬間はカラーで残したい」という撮影した人の気持ちまで、その一枚から想像することができます。
実家のアルバムにある「白黒からカラーへの境界線」。
それは単なる写真技術の変化ではなく、ご家族が新しい時代を歩き始めた境界線でもあるのです。
現代に例えるなら、「我が家に初めてスマホがやってきた日」に少し似ているのかもしれませんね。

ところが……昔のカラー写真がオレンジ色に変色している

昭和45年(1970年)の写真。変色が激しいものと、そうでないものがあります。

アルバムをさらにめくっていくと、今度は少し気になる変化に出会うことがあります。
昭和40~50年代頃に撮影された古いカラー写真。
確かにカラー写真なのですが、「全体がオレンジ色になっている」、「赤っぽく変色している」、「黄色っぽくなって、昔の色がわからない」、「モヤがかかったように色あせている」そんな写真はありませんか?
一方、それより何十年も前に撮影された白黒写真は、意外なくらいクッキリと残っている。
「どうして新しいカラー写真の方が傷んでいるの?」、不思議に思われるかもしれません。
でも、これには理由があります。

なぜ昔のカラー写真はオレンジ色になるの?
一般的なカラープリントでは、主にシアン(青緑)・マゼンタ(赤紫)・イエロー(黄)という色素の組み合わせによって、さまざまな色を表現しています。
ところが、この3つの色素は永遠に同じ状態を保てるわけではありません。
長い年月の間に、熱、湿度、光などの影響を受けて少しずつ変化していきます。米国議会図書館も、高温や高湿度が写真の劣化を速め、多くのカラー色素の退色や変色につながると説明しています。
しかも、すべての色がまったく同じ速度で失われていくわけではありません。
そのため色のバランスが崩れ、写真全体が赤っぽくなったり、黄色やオレンジ色に見えたりすることがあります。
実際、20世紀に広く使われた発色現像方式のカラープリントには、長期保存における色素の安定性という課題がありました。
米国国立公文書館では、1960~70年代につくられた一部のカラープリントについて、色ずれや退色が一般的に見られる一方、1980年代以降のプリントでは色素安定性が改善したものが多いと説明しています。
ですから、「昭和50年代の写真だから必ずオレンジ色になる」わけではありません。
写真が作られた年代や材料、現像処理、そして、その後何十年間どのような環境で保管されてきたか。
さまざまな条件が重なって、現在の写真の状態につながっているのです。

写真業界も「色あせ」と闘ってきた
もちろん、写真業界もこの問題をそのままにしていたわけではありません。
「撮った日の色を、できるだけ長く残したい」。
そのために、長い年月をかけて写真材料の改良が続けられてきました。
色をつくるための材料。
色素を形成する「カプラー」と呼ばれる材料。
印画紙。
画像を安定させる技術。
そして現像処理。
さまざまな研究と改良が積み重ねられてきました。
Kodakの技術資料によると、カラー写真の初期から1980年代初頭までは、熱による退色が主要な劣化要因の一つでした。
その後、マゼンタ色素を形成するカプラーなどの改良によって、熱や光による黄変・退色への耐性も改善されていきました。
つまり、写真技術の進歩とは、「白黒だった写真をカラーにできるようになった」だけではありません。
カラー写真が当たり前になったその先で、「その色を、どうすればもっと長く残せるのか」という、もう一つの挑戦が続いていたのです。

昔のカラー写真の失敗から、私たちが学ぶこと
ここで、少し考えてみたいことがあります。
50年ほど前にカラー写真を撮っていた人たちは、「この写真が50年後には赤くなっているかもしれない」などと考えながらシャッターを押していたでしょうか。
おそらく、多くの人はそんなことを考えていなかったでしょう。
目の前にある写真が、ずっとそのまま残るような気がしていたのではないでしょうか。
でも、それは現在の私たちも同じかもしれません。

「データだから大丈夫」と思っていませんか?
今、私たちはスマホで毎日のように写真を撮っています。
子ども。
孫。
旅行。
料理。
ペット。
何気ない家族の日常。
気づけばスマホやパソコンの中に、何千枚、何万枚もの写真が保存されています。
そして私たちは、どこかで、「データだから、ずっと残る」と思ってはいないでしょうか。
しかし、スマホは買い替えます。
パソコンもいつか故障します。
記録媒体も変わります。
クラウドサービスも、50年後に現在とまったく同じ姿で存在している保証はありません。
そして、もっと大きな問題があります。
仮に何万枚の写真データが残っていたとしても、家族が「どこに」「何が」「どのように」保存されているのか知らなければ、その写真を次の世代へ受け継ぐことはできません。
写真は、「保存されている」ことと、「未来へ残せる」ことは、同じではない。
昔の色あせたカラー写真を見ていると、そんなことを教えられる気がします。

写真は「その時代に合った方法」で残し直していく
写真を永久に変化させない方法はありません。
紙の写真には、退色や劣化があります。
デジタルデータには、機器の故障や記録媒体の変化、データ消失などのリスクがあります。
だからこそ大切なのは、一度保存したら終わりにしないこと。
ときどき見返す。
整理する。
必要に応じて複製する。
そして、次の世代が見られるカタチへ移していく。
実際、米国国立公文書館や米国議会図書館でも、写真を長く保存するためには、高温・高湿度や強い光を避け、適切な環境で保管することが重要だとしています。
特にカラー写真は温度の影響を受けやすく、低温環境が長期保存に有効とされています。
一般のご家庭で専門的な保存環境をつくるのは簡単ではありません。
だからこそ、「今ある写真を、今見られるうちに整理しておく」ことにも意味があるのではないでしょうか。

大切な家族写真を「2つのカタチ」で残しませんか?

実家の押し入れに眠っている、重くてかさばる古いアルバム。
少しずつ色あせはじめている昭和のカラー写真。
そして、今では家族にとってかけがえのない、大正・昭和の白黒写真。
大切なのは、「捨てるか、残すか」だけではありません。
これからも家族が見返せるように、残し方そのものを考えることだと思います。
『おくってフォトブック』では、古いアルバムや大量のプリント写真を整理し、大切な写真を選んで、コンパクトなフォトブックへ再編集します。
そして、フォトブックに掲載した写真はデータでも残します。
手に取って、いつでも見返せるフォトブック。
複製し、次の世代へつなぐことのできる写真データ。
どちらか一方ではなく、「見返すためのカタチ」と「残すためのカタチ」。
2つの方法で家族の写真を残していくことが、『おくってフォトブック』が大切にしている写真整理です。

あなたの家族の「カラー化の年」を探してみませんか?
今度、ご実家へ帰ったとき。
押し入れの奥から、古いアルバムを取り出してみてください。
そしてページをゆっくりめくりながら、「うちの写真は、いつからカラーになったんだろう?」と探してみてください。
白黒からカラーへ変わった、その一枚。
そこには、お父様やお母様が若かった頃の日本と、ご家族の歴史が重なっています。
そして、もしその写真が少しずつ色あせ始めていたら。
それは、「そろそろ、この思い出の残し方を考えてみませんか」という、古いアルバムからのメッセージなのかもしれません。
写真を整理することは、思い出を減らすことではありません。
家族が歩んできた時間を、これからも見返せるカタチにすること。
あなたのご家族の「カラー化の年」。
ぜひ一度、アルバムを開いて探してみてください。

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