いつから写真撮影の際に、「ピースサイン」をするようになったのか?
目次
1.ブイからピースへ
2.ピース、ピース、ピース
3.私たちも検証してみました
4.サインはV
5.お客様のご要望に寄り添う写真整理
ブイからピースへ
今年の7月19日に放送された、NHKの「チコちゃんに叱られる ! 」で、
カメラを向けられて「はい、チーズ」と言われると、お調子者の誰かが必ずピースサインをしますよね。それはなぜか?というクイズが出題されました…。
その答えが「1972年のカメラのCMで、井上順さんがアドリブでピースサインをしたから~」だったのです。皆さんご存じでした?
番組では、“ピースサイン”が生まれるまでを歴史を遡り検証していきました。
第2次世界大戦中、ドイツに制圧されたベルギーの偉い人がVictoire(勝利)の頭文字のVのカタチを指でつくってVサインを示したことからはじまり。終戦の1945年、ドイツに勝利したイギリスのチャーチル首相が群衆の前でVサインを披露し勝利を宣言したことが、Vサインが世界中に広がるきっかけになったと言っていました。当時はまだ「ピース」ではなく「ブイ」だったのです。
ピース、ピース、ピース
番組の検証は、さらに続きます。
1969年のアメリカ。愛と平和をテーマに約50万人が集まったコンサートで、当時カリスマ的人気を誇っていたジミ・ヘンドリックスが、ベトナム戦争への反戦の想いを込めてアメリカ国歌を演奏しながらVサインをしたそうです。これが勝利の「ブイ」から平和の「ピース」に変化するきっかけになったそうです。その後アメリカで反戦運動の広がりとともにVサインを掲げ「ピース、ピース」とデモ活動を行ったことから、平和への意思表示として“ピースサイン”が世界中に広まった、とのことでした。それから遅れること3年…。1972年にCM撮影でアメリカを訪れた井上順さんが、良くわからないまま“ピースサイン”をぱくった……いやいや“ピースサイン”に感銘を受けて、アドリブでやった…。それが日本で爆発的に流行って、写真撮影時の伝統的儀式になったということでした。
私たちも検証してみました
NHKが言うんだから間違いないと思いますが…、日ごろから大量の写真を扱っている仕事柄、少し気になります。そこで、これまでのお客様からお預かりした大量の写真から、日本でいつ頃から“ピースサイン”がはじまったのか、独自調査してみました。
まずは1969年、ジミ・ヘン以前はどうだったのでしょう?
1950年代(昭和25~34年)の女子高生と男子高生の写真です。
誰か一人くらい“ピースサイン”をしていてもよさそうなシチュエーションなのですが、当然のことながら一人もいません。
次に1960年代(昭和35~44年)の写真を検証。この当時も、大人も子どもも、誰一人として“ピースサイン”をして写っていませんでした。
そして、いよいよ本命1970年代(昭和45~54年)です。上記の写真は1975年のものです。今なら絶対“ピースサイン”をしている状況の写真なのですが、していませんね~…ところが ! !
集合写真なので見落としていましたが、二人の男の子が“ピースサイン”をしています ! ! 井上 順さんがCMで“ピースサイン”を披露した、1972年です。
しかも日付が11月9日。“ピースサイン”が世間に浸透するまでの時間を考慮すると、とても説得力があります。やっぱり子どもたちは、この手の流行りものに敏感です。
この写真をきっかけに、1977年(昭和52年)と1978年(昭和53年)に“ピースサイン”が登場 ! ! 当時は、シャイな大人たちよりも、子どもたちが大活躍です。
1980年代(昭和55年~平成元年)には、“ピースサイン”がパンデミック状態に。一気に蔓延したようです。子どもを中心に、若い人たちはみんな“ピースサイン”。カメラを向けると「ピ~ス」と笑顔で言うのが定番になりました。
そして、この頃から撮影者と被写体の新たな戦いがはじまりました…。撮影していることが被写体に見つかると、みんな「ピ~ス」と言いながら“ピースサイン”をするものだから、自然な笑顔と撮ることができません。特に子どもたちは手に負えない状態。カメラを見ると「ピース」「ピース」と駆け寄ってくるありさまです。当時は、とにかく子どもたちの間で“ピースサイン”が流行っていたようで、ヒトはいったい何歳から“ピースサイン”をはじめるのか調べたところ。保育園の写真から、2歳からはじめることが分かりました(笑)。大人から年齢を聞かれた時、指で示す際にたまたまカタチが一緒なので、いい訓練になっていたようです(笑)。
サインはV
ここまでNHKの番組の流れに沿って、なぜ“ピースサイン”をするようになったのか?を検証してきましたが、今回“ピースサイン”について調べていると、NHKの番組が取り上げていない真実に出会うことができました。
真実…それは「サインはV」の存在です。
「サインはV」とは、マンガが原作で1969年(昭和44年)10月~1970年(昭和45年8月)まで放送されていた女子バレーボールのドラマで、平均視聴率32.3%、最高視聴率は39.3%を誇る大ヒットを記録した超スポ根ドラマです。1970年に大人気ドラマは終了しましたが、視聴者からの熱い要望から、1973年(昭和48年)には、第2弾の放送がはじまりました。
ご覧ください。“Vサイン”です。
日本にチョキのカタチを広めたのは、「サインはV」の貢献度も高いのではないでしょうか? ジミ・ヘン、平和への願い、井上順、サインはV、これら4つの要素が絡まり合って、融合して“ピースサイン”は何物にも代えられない不動の地位を築いたのではないでしょうか…。
大量の“ピースサイン”の写真に困っておられる方、『おくってフォトブック』にお任ください。ちゃんと整理された思い出の写真は、貴重な未来への贈り物になります。ご一緒にアナログ写真の整理に取り組みましょう。
ちなみに「はい、チーズ」は、英語で「Say cheese(チーズと言って)」と言っていたことに由来しているそうです。「チー」と発音するときに顔が笑顔になることから使われるようになったと言われています。
※NHK(2024年07月19日放映)、「なぜピースをする」より