「つくしを見て」フラッシュバック

目次
1.“つくし”の思い出
2.1枚の写真が、語ること
3.昭和100年物語り
4.静かに燃える祈り
“つくし”の思い出
少し前の話ですが、ちまたにレジャーに関する情報が氾濫し、ゴールデンウィークを目前にしていた頃、ふと庭の雑草が目につき、「もしかしたらお墓の雑草がボウボウかも…」と嫌なイメージが頭をよぎったのです。そこで次の休日、お墓参り兼、墓掃除に出かけることにしました。
田舎の山の中にある墓地に到着。案の定、墓地には雑草が元気いっぱいに生えています。大きく深呼吸をして、覚悟を決めて、軍手をはめて、はいつくばって、雑草を根こそぎ退治。想定していたとはいえ、なかなかの重労働。時々水分補給しながら、1時間以上生き生きと生えている雑草たちと格闘。そろそろ先が見えてきた頃、霊標の裏に取りかかった時に“つくし”と遭遇。その瞬間、なぜかおやじのニヤリとした表情と笑い声が鮮明によみがえってきたのです。田舎生まれのおやじは、酒のあてに「つくしの佃煮」があると、とても喜んでいました。ということで小学生の頃、つくしを採ってくるとおやじは喜び、褒めてくれるので、つくしが生えるシーズンになると学校帰りにほぼ毎日、つくしをいっぱい採って帰りました。
つくしの料理は、前準備の手間が結構面倒で、1本1本ハカマを外し、水に浸してしばらくアクを抜き、そこからやっと料理がスタート。煮込むと驚くほど圧縮されて、ちょびっとになってしまうので、つくしの量はしっかり必要となります。おやじは酒を飲みながら、出来上がった「つくしの佃煮」を1本箸でつまみ、「この頭が開いていない つくしが美味い(少し苦味がある)」と口元をニヤリとし、そして酒を口に運んで頷きながら「よー採ってきた」と褒めてくれました。めったに褒めてくれることがないおやじが褒めてくれる嬉しさと、褒め慣れていないおやじのぎこちない笑顔。霊標の裏に生えていた“つくし”を見て、あの時の思い出が鮮明によみがえってきたから不思議です。
「なぜここまで鮮明にあの時の笑顔が頭に浮かんできたのか…」、その謎はすぐに解決しました。仕事柄、当時の若い頃のおやじの写真を見る機会がやたらと多かったからです。お客様に『おくってフォトブック』が懐かしい写真をどのようにまとめるのか説明する際、毎回おやじの写真に活躍してもらっているので、説明する度に頭に刻まれていたようです。「つくしの佃煮」をあてに、美味しそうに酒を飲み目を細めるおやじ…。もしかしたら、お墓の雑草取りを褒めてくれていたのかも知れません。いい思い出だな~と心地よいノスタルジックに浸っていると、おまけに母親の激怒する顔まで浮かんできました。その謎もすぐに解決。少しでも多くのつくしを採りたくて、体操服を入れる袋をカラにして、その袋につくしをパンパンに詰めて帰って、「草のヨゴレは落ちんのよ」と叱られたことを思い出しました。それも含めていい思い出。やっぱり写真は見返す事で、ささやかなハッピーを与えてくれることを実感したのでした。
1枚の写真が、語ること
アルバムの中の小さな四角い世界。そこに映る笑顔や風景は、ただ偶然に残されたものではありません。当時のカメラは、現在のスマホのように肌身離さず常に持参しているものではなく、フィルムを買い、カメラにフィルムをセットし、誰かがカメラを現場まで持って行き、その瞬間をとどめておこうとシャッター切る。フィルムの枚数には限りがあるので、決してムダなシーンは納めない。そして現像を待ち、仕上がったプリント写真をアルバムに並べる。そんな手間を惜しまなかった時代のぬくもりが、1枚1枚の写真に宿っているのです。「残すべきもの」として選ばれたからこそ、今ここにある。それは記録以上のものであり、誰かの想いが刻まれた、時の結晶なのかもしれません。たった1枚の写真には撮った人のまなざしや、写された人の人生のかけらが詰まっています。写真はただの紙ではありません。写真は、心を写したもの。それが、どんなに価値のある存在か、私たちは今、あらためて思い出すべきなのかもしれません。
昭和100年物語り

押し入れの奥に眠る重たいアルバム。黄ばんだページ、色褪せたプリント写真。けれど、そこに写る表情は今も鮮やかです。
昭和という時代は、戦後の混乱と復興、高度経済成長、家電の普及、テレビの茶の間。何もかもが「初めて」で、「夢中」で、「我慢」も「希望」もありました。そのすべてが、写真に刻まれています。家族が寄り添った団らんの一枚。入学式の晴れ姿。夏の縁側でのスイカのタネ飛ばし。誰かがシャッターを切り、現像し、アルバムに貼ったその思い出は、家族の歴史であると同時に、昭和という時代の証人でもあります。『おくってフォトブック』は、そんな尊い思い出を、いつでも手軽に手に取って見たくなる魅力的なフォトブックにまとめます。写真を選び、すっきりコンパクトに再構成したベスト盤の写真集と、データで保存します。
手に触れることで思い出すこと。ページをめくることで語り合えること。データとしてずっと残せる安心。『おくってフォトブック』で、昭和100年の歴史を、次の100年、200年先まで残しませんか?
静かに燃える祈り

6月1日は「写真の日」。『おくってフォトブック』では、役目を終えた写真に感謝を込めて、丁寧な写真供養(お焚き上げ)に向かいます。ただ燃やすのではありません。静かな祈りと共に、一枚一枚が空へと還っていく——それは、まるで先人の想いが煙になって舞い上がっていくような、厳かで、あたたかな時間。写真供養は、過去を清め、未来へ進むための祈りです。
6月1日には、皆様からお預かりしている大切な写真を供養していただきます。後日ご報告させていただきますので、お待ちください。